もくじ
裁判手続きの流れ
訴えの提起
- 訴状を裁判所に提出するところから始まる。
- 訴状のオンライン提出も可能となった。
- 訴状には原告と被告の氏名住所、請求の趣旨(原告が欲しい判決)、請求の原因などを記載する。
管轄
事物管轄
訴額 | 第一審裁判所 |
---|---|
140万円以下の紛争 | 簡易裁判所 |
140万円を超える紛争 | 地方裁判所 |
土地管轄
- 被告の住所地を管轄する裁判所 あるいは
- 財産権上の訴訟についての義務履行地(持参債務であれば原告側)
訴状の審査
- 請求の内容の当否が判断されるわけではない。
- 不備があれば補正すべきことを命じなければならない。
- 補正の命令を放置し、原告が不備を補正しない場合、裁判長は訴状を却下しなければならい。
第1回期日の呼び出し等
- 被告背の遡上送達と共に、第一回期日の呼び出しと答弁書の提出期限が指定される。
- 答弁書の提出は任意。
- 請求原因に対する答弁は訴状に記載された各請求原因事実ひとつひとつに、下記いずれかでこたえる。
認める
- 裁判上の自白ととする。
- 裁判所はこれに反する認定は許されない。
不知
- その事実を争ったものと推定される。
否認
- 何の否認もせずに沈黙する場合は、自白したものとみなされる。
第一回期日
- 判決を下すためには、原則として口頭弁論を開いて審理しなければならない。
当事者が欠席した場合の処理
原告が欠席
- 訴状がそのまま陳述されたものとして取り扱われる。
被告が欠席
case
答弁書を提出していた場合
答弁書を陳述したものとみなされる。
答弁書を提出していなかった場合
原告の請求を容認した判決が出される。(欠席裁判)

口頭弁論において、被告が答弁書に記載した事項を陳述した。この場合、原告は被告の同意を得なければ、訴訟を取り消すことができない。
第二回期日以降
争点整理手続
準備的口頭弁論
通常の口頭弁論方式による準備手続き。
弁論準備手続
- 準備室等で行われる、原則非公開の手続き。
- 争点整理の結果を証拠調べに引き継ぐためには、弁論準備手続の結果を陳述しなければならない。
書面による準備手続き
証拠の申出
証拠申出があった場合、以下のように扱われる。
- 証拠申出の却下
- 証拠決定(裁判所の裁量に任される)
裁判所は、当事者から申出のない証拠を、職権で調べることはできない。
(原告、被告から提出された証拠のみを調べることができる。)
口頭最終弁論
- 証拠は適切な時期に提出しなければならない。(適時提出主義)
- 自由心証主義とは、裁判所が証拠に基づいて事実を認定する際に、証拠の選択や証明力の評価を裁判官の自由な判断に委ねる考え方。
- 一旦、裁判官が獲得した証拠資料に対して、当事者は証拠調べ終了後に証拠の申出を撤回することはできない。
- 証拠共通の原則とは、共同訴訟人の1人が出した証拠は、他の共同訴訟人との関係でも当然に証拠になる(裁判所は事実認定の資料とすることができる)というもの。
- 裁判所は商人および当事者の尋問をできる限り、争点及び証拠の整理が終了した後に集中して行わなければならない(集中証拠調べの原則)
和解
- 訴訟がどの段階であっても、和解を勧告することができる。(口頭弁論終結後でもOK)
- 和解勧告を拒否した者が敗訴するわけではない。
- 訴訟の和解をするにあたって、訴訟代理人は和解についての委任を本人から受けていることが必要。
- 和解調書は債務名義となる。
判決
- 電子判決書に基づきて言い渡される。
- 判決の言い渡しは、当事者の一方または双方が不出頭の場合でもすることができる。
- 判決は送達の日から2週間が経過すると確定する。
- 判決に不服があるものは、それまでの間に上訴する。
- 民事訴訟の第一審の判決に不服がある当事者は、原則として、第一審が地方裁判所の場合は高等裁判所に、第一審が簡易裁判所の場合は地方裁判所に対して控訴することができる。
2022年民事訴訟法改正
- 訴状のオンライン提出も可能となった。
- 送達もオンラインでできる。
- web会議の方法で口頭弁論期日における手続等ができる。
- web会議による尋問ができる。
- 判決の言い渡しは、電子判決書を作成しなければならない。
上訴・少額訴訟
上訴の種類
- 上訴は、控訴・上告である。
- 【控訴】地方裁判所・簡易裁判所 → 高等裁判所
- 【上告】高等裁判所 → 最高裁判所
- 最高裁判所への上告理由h、憲法違反と絶対的上告理由に限定されている。
- 絶対的上告理由とは、法律に列挙された重大な手続き違反の事由。
少額訴訟
- 簡易裁判所において、訴額が60万円以下の金銭の支払い請求に限って利用できる。
- 自然人も法人も利用できる。
- 原則として1回の期日で直ちに判決を言い渡す。
- 証拠書類や証人は、審理の日にその場で調べられるものに限られる。
- 原告の請求を認める場合でも、分割払い、支払猶予、遅延損害金免除の判決を言い渡すことができる。
- 不服がある場合は異議を申し立てることができるが、控訴はできない。
- 年間利用回数に制限がある。
民事訴訟における裁判所の判断形成プロセス
処分権主義
- 民事訴訟において当事者が訴訟の開始、対象、終結を自由に決めることができること。
弁論主義
- 弁論主義は、訴訟資料の収集は当事者の権能と責任であるとする建前。
- 事実と証拠は当事者が提出し、自白はそのまま判決になるということ。
弁論主義の内容
その
主要事実
- 当事者が主張しない主要事実をむやみに取り上げることはできない。
その
事実認定
その
自白
当事者間に争いのない事実は、そのまま判決の基礎としなければならない。
その
証拠方法
当事者が申し出た証拠方法を取り調べて、その結果得られた心証に基づく必要がある。
証明責任
- 主要事実を証明できないことによる不利益を証明責任という。
要件事実
例
AはBに消費貸借契約に基づく貸金返還を求めた。
そもそもAからお金を借りていない。

Aからお金を借りたが、返済した。

Aからお金を受け取ったが、それはもらったものである。

その他の紛争解決方法
和解
裁判外の和解 | 示談 | |
裁判上の和解 | 訴え提起前の和解 | 即決和解 |
訴え提起中の和解 | 訴訟上の和解 |
示談
- 当事者間で話し合い、損害賠償責任や金銭の支払義務などについて合意して争いをやめること。
- 決まった様式はないが、契約書(示談書)を交わすのが一般的。
- 示談が成立した場合、公正証書化する方法もあるが、公正証書にしなくても法定航路Y区は生じる。
- 金銭の支払いなどを目的とする請求には強制執行認諾文言が付されている場合は債務名義となる。
即決和解
- 簡易裁判所に申し立てをする。
- 和解調書が作成され、和解調書は債務名義となる。
- 債務名義は金銭債権に限定されない。
- 不動産の明け渡しなどについて強制執行が可能となる。
調停
- 裁判所に当事者等が出頭し、話し合いをする手続き。
- 調停調書が作られ、債務名義となる。
- 調停委員には強制的に解決策を押し付ける権限がない。
- 当事者は期日に出頭することを義務付けていない。
支払督促
- 金銭の支払い請求権等について、簡易裁判所書記官に申し立てる。
- 支払督促は、債務者の審尋なしに発せられる。
- 相手方が異議を出すと通常訴訟に移行するため時間がかかる。
仲裁
- 仲裁人という第三者によって判断される。
- 確定判決と同一の拘束力が与えられる。
- 仲裁合意は書面によらなければならない。口頭はNG。
- 仲裁合意を無視して裁判所に申し立てた相手方に対して、訴訟の却下を求めることができる。
- 仲裁手続きは原則として非公開。
まとめ
和解 | 裁判外 | 金銭の支払いを目的とする請求は強制執行認諾文言書が付されて債務名義となる。 |
即決和解 | 簡易裁判所に申し立てを行い和解を行う。 | 和解調書が作成され、債務名義となる。 ・金銭債務に限定されない。 ・不動産明け渡し等の強制執行が可能 |
調停 | 裁判所に当事者等が出頭し話し合いをする。 | 調停調書が作られ、債務名義となる。 |
支払督促 | 簡易裁判所書記官に申し立てる。(金銭の支払い請求権のみ) | 金銭の支払い請求権について、簡単に債務名義がとれる。 |
ADR基本法
- 裁判によらず公正中立な第三者が当事者間に入り、話し合いを通じて解決を図る手続。
- 特定和解されたものについては、強制執行をすることもできる。
国際取引に関する法的諸問題
国際裁判管轄(裁判地)
- どこの裁判所に訴えることができるかという問題。
- 統一的なルールは存在しない。
- 日本の民事訴訟法には「債務の履行地が日本にあるとき」「請求の目的が日本国内にあるとき」は日本の裁判所に国際裁判管轄があるとしているが、前述の通り世界の統一的なルールはない。
- 海外企業と契約するときは事前に裁判地を合意することがある。
- 合意は書面または磁気的記録によってしなければ効力を生じない。
- しかし合意同意になるとは限らない → フォーラム・ノン・コンヴィニエンスの法理
フォーラム・ノン・コンヴィニエンスの法理
訴えの提起を受けた裁判所 が、当該事案を審理するにあたっては、管轄権を有する他の裁判所で審理を 行う方がより適切であり便宜であると考えた場合、裁量により訴えを却下す ることを認める法理である。
- 国際的訴訟競合とは、複数の国に関連する民事事件において、複数の国の裁判所が提訴可能な裁判所として並存し、同一の事件について複数の国の裁判所に訴えが提起されることを指す。
- 民事訴訟法上では国際的二重起訴とも呼ばれる。
準拠法
- いずれの国の法律を当該取引に適用するかという問題。
- 国際的な統一基準はない。
- 日本の法律では、準拠法について当事者の合意がある場合、当事者の合意による準拠法を手協する。
- 合意がない場合は、最も密接に関係する場所の法律による。
外国判決の執行
- 外国判決を執行するためには、日本の裁判所で執行判決を得る必要がある。
執行判決を得るための条件
- 敗訴被告に命令の送達を受け、または応訴したこと。
- 判決の内容や訴訟手続きが、日本における公の秩序・善良の風俗に反しないこと。(懲罰的な損害賠償は日本の公序良俗に反する)
仲裁
- 契約当事者が選定した第三者の裁定に委ねること。
- 当事者はその裁定に拘束され、訴訟はできなくなる。(不服申立ても許されない)
- 仲裁のメリットは非公開でスピーディな解決ができること。
- 一方、判断基準の不明確性、上訴できないといったデメリットがある。
- 仲裁の種類には個別的仲裁(当事者たちが選ぶ)と制度的仲裁(常設の仲裁機関に依頼する)がある。
アメリカの司法
原則
- 【ロング・アーム・スタチュート】自州に所在しない被告に対する自州の裁判管轄権を広く認めるアメリカの法律。
- 【手続きは法定地法による原則】アメリカの裁判所で国際取引紛争が審理される場合は、アメリカの民事訴訟手続きに従って裁判がされること。
司法体系
- 【連邦法】アメリカ全土共通の法律。知的財産については連邦法を適用する。
- 【州法】州ごとに異なる法律。
裁判手続き
- 法定審理に入る前に証拠を開示させるディスカヴァリーが行われる。和解を促す効果がある。(証拠の後出し提出はNG)
- 一般人から選ばれた陪審員が参加する。
契約法性
- 日本の契約は合意のみで成立する。
- アメリカの契約は合意+約因(行為の結果相手方から約束と引き換えに与えられるなんらかのもの)で成立する。
- 例えばアメリカでは片方の当事者が一方的に利益を享受する贈与等は「契約」に当たらず、法律上執行はできない。
日本法 | 英米法 | |
---|---|---|
意思表示の効力発生時期 | 到達主義 | 発信主義 ※国土が広いから? |
模試込みの拘束力 | 申込の意思表示は原則として撤回できない。 | 自由に撤回できる。 |
国際取引における契約書作成
確認文書
書面による確認の方式
- minutes of meeting … 交渉の議事録
- Letter of intent, Memorandum of Understanding (MOU) … 中間的な合意文書。法的効力の有無はその内容及び当事者の意図による。
国際取引契約の条項
- 【不可抗力条項】不可抗力の概念は英米法系には原則存在しない。よって具体的に列挙すべき。
- 【完全合意条項】契約締結以前の契約の目的時効に関して存在した当事者間の合意に優先することを規定した条項。
- 【通知条項】通知が到達しない場合でも通知の効力を生じさせるために発信主義で合意しておく必要がある。
インコタームズ
- 貿易取引条件について国際的な標準を定めること。
- インコタームズ自体は条約ではなく、法的な強制力は全くない。
国際取引に関する問題
属地主義
- 属地主義とは、法律の効力がその法律が施行されている地域に限定され、地域外のものには効力が及ばない考え方。
知的財産権保護の国際化
パリ条約(工業所有権)
- 内国民優遇の原則…相手国の国民や企業に対して自国民と同等の権利を保障することを意味する。
- 特許独立の原則…同盟国の国民が各同盟国において出願した特許は、他の国において同一の発明について取得した特許から独立していることを意味する。
特許協力条約(PCT)
- 1つの国際出願をすれば、その複数の指定国において出願したのと同一の効果が与えられる。
ベルヌ条約(文学的・美術的著作物)
- 内国民優遇の原則…相手国の国民や企業に対して自国民と同等の権利を保障することを意味する。
- 無方式主義の原則…著作権や著作隣接権は著作物を創作したり実演したりした時点で自動的に発生し、権利の発生に登録などの手続を必要としないという考え方。
並行輸入
- 海外で製造・販売された商品を、正規代理店や輸入販売契約を結んでいない第三者が、海外で購入して国内に輸入する行為。
- 特許権に基づき並行輸入を阻止することは、原則としてできない。
国際倒産
- 日本は普及主義を採用しており、破産等の効力は外国にある財産にも及ぶ。
- 外国で弁済を受けた一部の債権者は、同順位の他の債権者が同等の配当をうけるまでは、配当を受けることができない。
国際管轄規定
日本の倒産法において、いかなる事件に国内倒産処理手続きの開始を申し立てることができるのか、下記のように規定されている。
- 破産開始手続き&民事再生手続
日本国内に債務者の住所、居所、営業所、事務所、財産があるときに手続きの申し立てをすることができる。 - 会社更生手続
日本国内に債務者の営業所があるときに申し立てをすることができる。外国にある更生会社の財産にも及ぶ。
外国公務員への贈賄
- 不正競争防止法により刑事罰が科される。
WTOの3つの原則
- 最恵国待遇 … いずれかの国に与える最も有利な待遇を、他の. すべての加盟国に対して与えなければならないという原則。
- 内国民待遇 … 内国の生産品と加盟国からの輸入品とを内国税その他の待遇において平等に扱うべきとする原則。
- 数量制限の一般的廃止 … 人等の生命または健康の保護や有限天然資源の保存のために必要でない限り、ある生産品の輸入量を規制して、自由貿易を妨げることを禁止する。