もくじ
個人情報保護法
個人情報とは
- 生存する個人に関する情報。
- 個人識別符号(個人を識別することができるも(指紋、顔認識データ、免許証、パスポート番号など))が含まれるものも対象。
- 法人や死者に関する情報は、直ちに個人情報に該当するわけではない。
- 外国人も含まれる。
- 要配慮個人情報とは、病歴、犯罪の経歴、犯罪被害事実など、特に配慮を要するもの。
- 匿名加工情報とは、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工したもので、当該個人情報を復元することができないようにしたもの。
- 一方、仮名加工情報とは、他の情報と照合すれば特定の個人を識別できるもので、仮名加工情報も個人情報である。
個人情報データベース
- 個人情報データベース等はコンピュータを用いて検索できるように体系的に構成したもの。
- 容易に検索できるように体系的に構成されていれば、紙でも個人情報データベースに該当する。
- 会社の従業員が個人的に作成した顧客名簿でも、業務に使用する目的で作成されたものであれば、個人情報データベースに含まれる。
個人情報取扱事業者
- 個人情報取扱事業者とは、個人情報データベース等を事業のように供している者のこと。
- あらゆる業種が該当し、営利性を要件としない。
- 取り扱う個人情報の多寡を問わず、個人情報取扱事業者に該当する。(昔は5,000人以上だった)
個人情報取扱事業者
利用目的とそれによる制限
利用目的を超えた扱い
利用目的の達咳に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
利用目的の変更
関連性を有する合理的に認められる範囲を超えて変更することはできない。
利用目的の通知・公表
通知あるいは公表しなくてはならない。
どちらか片方でOK
- 個人データは正確かつ最新の内容に保たなければならない。
- 事業者は安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。
- 事業者は従業者及び委託席に対する必要かつ適切な監督を行わなければならい。
第三者提供
- あらかじめ本人の同意を得ないで、第三者に提供してはならい。
- 子会社やグループ会社も含まれる。
- 子会社と個人データを共同利用するときは、あらかじめ本人に通知し、または本人が容易に知り得る状態のいておけば、あらかじめ本人の同意を得ずに、子会社に個人データを提供することができる。
- 法令に基づいて提供する場合は、あらかじめ本人の同意を得ることなく個人データを第三者に提供することができる。
- 例外的にオプトアウトによれば、あらかじめ本人の同意を得なくても、個人データを第三者に提供できる。
- ただし要配慮個人情報、不正取得された個人データ、オプトアウト規定により提供された個人データは、オプトアウトの方法による第三者提供をすることはできない。
第三者に該当しない場合
- 個人情報のパソコンへの入力を外部の業者に委託する場合
- 事業の承継に伴って個人データが提供される場合
個人情報への本人の関与
- 本人の知り得る状態に置かなければならない。
- 本人は事業者に対し、開示を請求することができる。事業者は遅滞なく開始しなければならない。
- 事業者は本人から訂正等の請求を受けた場合は、遅滞なく必要な調査を行い、必要に応じて訂正しなければならない。
- 事業者は本人から停止等の請求を受けた場合、その請求に理由があることが判明したときは、遅滞なくデータ利用停止等を行わなければならない。
個人商法保護違反の法的リスク
- 個人情報の漏洩により顧客が損害を受けた場合、事業者は損害賠償席にを負う可能性がある。
個人情報取扱事業者に対する監督
報告・立入検査
必要な報告や資料の提出を求め、または立入検査をすることができる。
勧告
必要な措置をとるべき旨を勧告することができる。
命令
勧告に係る措置をとるべきことを命ずる。
罰則
- 命令に違反した者に対して罰則が適用される。
- 事故もしくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、または盗用したときは、刑事罰が科される。
マイナンバー法(個人情報保護法の特例)
- マイナンバー法では本人の同意があっても特定個人情報を第三者へ目的外提供してはならない。
インターネット関連の法規制
不正アクセスの禁止行為
- なりすまし行為の禁止
- ID・パスワードの不正取得の禁止
- 不正アクセス行為を助長する行為の禁止
プロバイダ責任制限法
損害賠償責任の制限
「送信防止措置を講ずることが技術的に可能」であり、かつ、「当該情報の流通による権利侵害を知っていたか、または知ることができたと認めるに足りる相当な理由があるとき」でなければ、プロバイダは損害賠償の責任を負わない。
発信者情報の開示請求
- 損害賠償請求権の行使のために必要である場合、発信者の情報開示をプロバイダ等に請求することができる。
- プロバイダは開示するかどうか、当該発信者に意見を聞かなければならない。
- プロバイダは開示請求に応じないことにより開示請求者に生じた損害については、故意または重大な過失がなければ、原則として賠償の責めに任じない。
- プロバイダ責任制限法の「特定電気通信役務提供者」にはプロバイダのほか、掲示板を設置するウェブサイトの運営者も含まれる。
迷惑メール防止法
- あらかじめ送信をするように求めたもの、また同意した者以外にメールを送付してはならない。
- 送信者の情報を偽った広告宣伝メールの送信や、架空アドレスによる電子メールの送信は禁止されている。
金融・証券業に対する規制
金融サービス提供法
預貯金、株式、保険・共済など金融商品の販売に関わる業者(金融商品販売業者)が消費者に対して重要事項の説明義務を果たし、断定的判断の提供を禁止することによって、消費者保護を強化することにあります。
金融商品取引法
- 有価証券の発行や売買等の金融取引を公正なものとし、投資家の保護や経済の円滑化を図るために定められた法律。
- 有価証券やみなし有価証券が対象となる。
- 預金や保険は規制対象に含まれない。
公開買付け制度
- 公開買付け制度とは、買付価格、数量、期間などを子隋して、取引所金融商品市場外で、不特定多数の者から株券等を買い付ける制度。
- 買付の価格は、すべての応募株主について均一でなければならない。
- 市場外で有価証券の買い付けを行う場合、取得後の株券所有割合が5%を超える計画であれば、公開買付によらなければならい。
5%ルール
- 発行済株式の5%を超えて保有するものは、内閣総理大臣に大量保有報告書を提出しなければならない。
- 1%以上の増減があった場合は、変更報告書を提出しなければならない。
有価証券売買の勧誘に対する規制
- 金融証券取引法は、金融商品取引業者が投資家にアドバイスをすること自体は金融商品取引法に違反しない。
- 断定的判断の提供による勧誘は禁止されている。
- 顧客に損失等が生じた場合、金融商品取引業者が補填する旨を約束することは禁止されている。
- 顧客側も要求してはならない。
- 外務員の業務に従事させるには、外務員登録原簿に登録されねばならない。
インサイダー取引
- インサイダー取引とは、会社の重要な情報を容易に得られるものが、未だ情報が公開されていない段階で、株式等の売買を行うこと。
- インサイダー取引は、刑事罰が科せられる。
- 他人に利益を得させ、または他人の損失発生を回避させる目的をもって情報伝達行為や取引推奨行為をすることは禁止されている。
食品の安全に関する法律
食品表示法
- 内閣総理大臣(消費者庁長官)は食品表示基準を定めなければならない。
- 食品表示基準に従った表示がない食品の販売をすることはできない。
保健機能食品
届出 | 許可 | |
---|---|---|
特定保健用食品(トクホ) | - | 必要 | 必要
栄養機能食品 | 不要 | 不要 |
機能性表示食品 | 必要 | 不要 | 不要
その他の規制等
条例と法律の関係
- 条例制定は法律の範囲内で制定できる。
- 法律よりも厳しい基準を定める条例(上乗せ条例)や法律の規定よりも範囲を広げる条例(横出し条例)がある。
- 規制目的が同じで、かつ法律の規制の趣旨が全国一律の均一的な規制を目指している場合は、上乗せ条例や横出し条例を制定することはできない。
- 規制目的が同じであっても、法律が全国一律に規制する趣旨ではなく、国家の最低基準を定めたにすぎない場合は、上乗せ条例や横出し条例を制定することはできる。
産業廃棄物処理法
- 何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。
- 事業者は、自らの責任において適正に処理しなければならない。
資源有効利用促進法
- リデュース(廃棄物の発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再資源化)
再生可能エネルギー促進法
- 電力会社が一定の期間、一定の価格で発電した電気を買い取ることを義務付ける。
環境関連法による企業に対する規制
- 大気汚染防止法や水質汚濁防止法などの中には、加害者に無過失責任を負わせ、被害者の立証責任を軽減する規定が設けられている。
社会福祉関連法
- バリアフリー法には新設に際して移動等円滑化基準への適合義務、既存施設には努力義務が定められている。
- 国、地方公共団体、公共交通事業者、不特定多数の者が利用する施設の管理者は、身体障害者補助犬の同伴を拒んではならない。
- 障害者差別解消法では、行政機関だけでなく事業者についても、必要かつ合理的な配慮をしなければならないとしている。
許認可と行政手続法
行政手続法の対象
- 申請に対する処分
- 不利益処分
- 行政処分
- 届出に関する手続き
- 命令等を定める手続き
- 行政上の強制執行、行政調査は適用を除外している。
行政手続法の特色
許可、認可、免許等の迅速、公正な処理
- 審査基準を具体的に定め、公表しなければならない。
- 標準処理期間を定めるよう努めるとともに、定めた場合は公表しなければならない。
不利益処分を課す場合における国民の権利・保護
- 不利益処分の基準を定め公表するよう努めなければならない。
不利益処分の場合は努力義務。
行政指導の透明化、文書化
- 行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取り扱いをしてはならない。
- 申請者が行政指導に従う意思がないことを表明した場合、行政指導を継続してはならない。
- 行政手続法の定める各種手続きは、法律に基づく処分、届け出についてのみ適用され、地方公共団体には適用されない。
企業に関わる犯罪
会社の企業情報を漏洩した場合
基礎知識
- 窃盗罪は、他人の物を盗む犯罪。
- 業務上横領罪は、他人から預かっている財物を不法に自分のものとする犯罪。
- 背任罪は、他人から任されている職務に背いて損害を与える犯罪。
窃取したもの | 管理保管責任がある者か | 罪 |
---|---|---|
情報 | ある | 背任罪 |
ない | 刑法では無罪(不正競争防止法で処罰される可能性あり) | |
モノ | ある | 業務上横領罪 |
ない | 窃盗罪 |
利益供与
- 株主の権利の行使に関し、利益供与した役員、使用人等、利益を受けたものは処罰される。
- 正当な対価の授受があってもNG。
- 利益を要求する行為自体がNG。
特別背任罪
- 取締役等が自己または第三者の利益を図る目的または会社を害する目的で任務に違反して会社に財産上の損害を与える行為。
- 例えば不良貸付(回収する見込みがないのに金銭を貸し付ける)は特別背任罪に該当する。
信用棄損・業務妨害
刑法
- 偽計業務妨害罪
- 威力業務妨害罪
- 信用棄損罪…人の経済的信用を毀損
不正競争防止法
- 競争関係にある他人の信用を害するようなウソの事実を告知、流布した場合、不正競争防止法上の営業誹謗行為に該当する。
- この場合、不正競争防止法上の刑事処罰は規定されていないが、信用棄損罪あるいは偽計業務妨害罪の要件を充たす場合、刑法所の犯罪となり処罰される。
公益通報者
公益通報者保護法では公益通報を行ったことを理由として以下について規制している。
- 解雇の無効
- 労働者派遣契約解除の無効
- その他不利益な取り扱いの禁止
- 損害賠償請求の禁止
公益通報者保護法の対象法令
金融商品取引法、産業廃棄物処理法、個人情報保護法、会社法、独占禁止法など
通報先
- 労務提供先等
- 行政機関
- 社外のヘルプライン等
労働組合
労働組合とは
- 経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体。
- 労働組合への加入、脱退は各労働者の自由である。
- 労働組合の結成にあたって、使用者の承認等は不要。
労働協約
- 労働協約の作成に当たっては合意事項を書面にして、両当事者が署名又は記名押印することが必要。
- 労働協約は3年を超える有効期間を定めることはできない。
- 3年を超える期間を定めても、有効期間は3年となる。
- 労働協約に抵触する就業規則については、労働基準監督署長は変更命令を出すことができる。
- 労働者の3/4以上が1つの労働協約の適用を受けると、残りの労働者も同協約の適用を受ける。
効力関係
強い ← → 弱い
法令>労働協約>就業規則>労働契約
社員就業規則の作成
作成義務
常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成しなければならない。
意見聴取
届出
作成、変更した就業規則を、所轄の労働基準監督署長に届けなければならない。
周知
従業員に周知させなければならない。
就業規則の変更にあたっても、労働組合の意見を聴く必要がある。
不当労働行為
- 正当な組合活動を理由として、不利益な取り扱いをしてはならない。
- 黄犬契約(労働組合への不加入又は脱退を条件とする労働契約)を締結してはならない。
- ユニオンショップ協定(労働者が労働組合の組合員であることを雇用条件とする)は認められる。
- 労働組合に対する経費援助は認められない。
- ただし、就業時間中に行われた団体交渉中の賃金の支給、最小限の広さの組合事務所の供与は許される。
労働者が労働組合の正当な争議行為により損害を受けたとしても、使用者は労働者に損害賠償請求することはできない。
労災保険
- 労働者を1人でも(臨時、パートタイマーを含む)使用していると事業者に加入義務がある。
- 事業主が保険料の全額を負担する。
- 民事上の損害賠償額を算定する際に、労災保険の給付額は差し引かれる。
- 法人の役員やその同居家族は、労働保険の適用対象とならない。
業務災害と認められる要件
業務遂行性
事業主の支配、管理下にある状況であること。
- 残業中
- 作業中の用便、飲水等
- 事業施設内にいる(昼食時、近所の定食屋に行くのは対象外)
業務起因性
- 業務と災害の間に因果関係がなければならない。
- 私的行為は業務起因性が認められない。
- 出張や社用での外出も含む。
- 業務災害とは労働者の業務上の負傷、疾病、傷害、死亡を言う。
通勤災害と認められる要件
住居と就業場所との通勤のための往復であること
- 二重就業者が第1の事業場から第2の事業場へ移動することについても通勤とされる。
- 第1の事業場が兼業禁止だったとしても通勤災害と認められる。
- 単身赴任先から自宅への移動でも通勤とされる。
合理的な経路を移動し、逸脱しないこと
- 事故等が発生して迂回した場合も認められる。
合理的な方法であって、途中で通勤行動を中断しないこと
- 日常生活上必要な行為を行うためのもの(スーパーや病院への立ち寄り)、その後合理的な経路に復せば通勤として取り扱われる。
- スーパーや病院に立ち寄っている間は除く。
- 居酒屋に立ち寄った場合は、そこで通勤が中断したものとみなされる。